嘘をつくのは何故いけない?【ヨガ哲学】
南アフリカでヨガ講師をしている、ゆかりーです。
今回は、子どもが将来生きやすくなるヒントとして、ヨガ哲学の「サティア(正直)」を紹介します。
ヨガ哲学のサティアとは
ヨガ八支則で説かれている「ヤマ/やるべきでないこと」の一つに、サティア(正直)があります。
サティア(正直)とは
①自分の利益やエゴを守るために、嘘をついてはいけない
②自分の気持ちを偽らない(自分への嘘もダメ)
ヨガ八支則すべてはこちら↓(私の寄稿記事です)
ヨガの八支則を守って日常生活を生きていくと、心の平穏を保てるようになると考えられています。
ヨガのゴール「悟り(苦悩のない状態、ピュアな状態、幸せな状態)」への第一歩のようなものですが、私は「やった方が幸せになれること」くらいに捉えています。
サティアは、他人にはもちろん、自分にも嘘をつかないことです。
そもそも何故、嘘はいけない?
「他人に嘘をつくな」というのは、誰もが子どもの頃から言われてきたことかと思います。
なぜ嘘はいけないのか。
それは・・・
嘘をつくことで自分の人生を不幸にしてしまうから。
まず、「人は嘘をつくもの」という概念を、自らに植え付けることになります。
人を騙したことがある人は、他人に対して疑心暗記になります。裏切ったことがあれば、今度は自分が裏切られるかもしれないと怯えます。浮気をしている人は、すぐに相手の浮気を疑い心が安定しません。
どれも、自分が自分の植え付けた「人は〇〇してしまうものだ」という概念のせいです。
ちなみに「騙す」「裏切る」「浮気する」といった行為は、「嘘をつく」が発展した形。なので嘘をつくのが平気になると、どんどん悪い方向へすすんでいきます。
嘘をつくデメリットは他にも
・周囲から信頼されなくなる(仕事でも)
・心から信頼し合える人間関係が築けなくなる
・本当の自分の気持ちが分からなくなる
・嘘がバレることに怯えて暮らすようになる
などがあります。
いずれにせよ「自分自身が幸せでなくなるから」嘘は辞めてほしいなと思うのです。
しかし「嘘はだめよ」「嘘はよくないことだから、やめようね」とどんなに伝えても、子どもは嘘をつくことがありますね。
ちなみに子どもが嘘をつくこと自体は、「成長過程で当たり前だから、過度にとがめなくて良い」と育児本で目にしたことがあります。みんな嘘はつくんです。だから、「自分の子は嘘つきなのかしら・・・」と心配は全くしなくて良いと思います。
子どもが嘘をつく理由
子どもが嘘をつく理由は「怒られないため」「よく見せるため」「嫌われないため」つまり、自分を守るためだと思います。
私は、まだ短い子育て経験の中で「他人のせいする」子どもに出会ったことがあります。その子は親がくると、何も聞かれていないのに「私じゃない、○○くんがやった!」と訴えました。(嘘でした)
大好きなお母さんに怒られないよう、嫌われないよう・・・そんな必死が伝わってきました。(その子は何度か同じようなことがありました)
過去に強く責められたり、失敗をとがめられたりした経験がトラウマになってしまうと、嘘をよくつくようになると言われています。
また、「良い子」でないと親から愛されないと思っている子は、失敗や悪いことを隠してしまいます。悪いことをしたときに、親から冷たくされた、ため息をつかれた、親の機嫌が長らく悪くなったといった経験があると、子どもは親の愛情を得るために「良い子」でいることを頑張り続けます。
他にも、「怒らないから本当のことを言ってごらん」と言われ正直に言ったら怒られた場合、子どもは「今後は隠しとおそう」と心に決めてしまうことでしょう。
子どもに正直でいてもらうために
子どもは嘘をつくもの。大げさに考えずに受け止めて大丈夫。ですが、できるだけ正直でいてもらいたい、平気で嘘をつくオトナにはなって欲しくないと思います。
理由は述べた通り、人を心から信用できなくなるからです。もちろん、人からも信頼されなくなります。小さな頃はそこまでの結果にならなくても、嘘をつく習慣がついたままオトナになると、自分で自分を苦しめてしまうことになります。
では、子どもにサティア(正直)を守ってもらうには、どうしたら良いのでしょう。こんなことを考えてみました。
(私は教育者ではないので、いろいろな育児本からヒントを得ています)
・失敗を強くとがめない
子どもは怒られるのは避けるために、反射的に嘘をつきます。だから、失敗に対してはなるべく怒らないことが大切です。
モノをうっかり壊してしまう、忘れ物をする、間違ったことをする。オトナでもありますよね。私はよくあります。
こういった部類のことは、「大丈夫だいじょうぶ」「ママもよくあるよ」くらいに留め、あまり気にしない姿勢を見せること。
そうすると子どもも「踏んで壊しちゃった、ごめん」「こぼしたからタオルちょうだい」と素直に言ってきます。
これは、夫婦関係に置き換えると分かりやすいです。グラスを割ってしまったときにひどく怒るような夫には、割ったことを隠し通したくなりますね。「まぁ気にするな」という夫なら嘘をつかず打ち明けるでしょう。
・冷たくしない、飽きれない
悪いことをしたときに、冷たい態度をとる、冷めた目線を向ける。それも恐怖で支配する方法の一つです。
大好きな親に嫌われたくない子どもは、親のいないところで悪いことをしてしまったときに、何が何でも隠し通そうとします。
その結果、人のせいにしたり、人に嘘を強要させたり、さらなる嘘をついたりとよくない方向へいってしまいます。
・正直に打ち明けてくれたら褒める
「これ壊しちゃった」「今日スクールで喧嘩して、〇〇が泣いちゃった(自分が泣いちゃったパターンもある」と打ち明けてくれたら、どんなひどい内容であってもまずは「教えてくれてありがとう」「教えてくれて嬉しい」「正直に言ってくれてえらい!勇気あるね!」と褒めまくるのも大事なことだと思います。
(ダメなシーンで怒るより、正しいことをしたときに褒めまくる!というのは、てぃ先生(有名な教育の方)のやり方だったかな?)
正直に打ち明けて、怒られた、呆れられた、がっかりさせたとなれば、これからは秘密として抱えていくようになると思いますよね。
「正直に言ってよかった!」(正直=褒められること、えらいこと、すっきりすること)と思わせられるような声がけを意識しています。
・良い子でなくても大好きと伝える
子どもには「悪い子でも良い子でも関係なく大好きだよ」「いつでも味方だよ」そう伝えるのも効果的。
夜寝る前にそう言うと、5歳の息子は「今日、こんな嫌なことがあった・・・」と友人関係のことを話してくれることもあります。子どもにとっては、勇気のいることですね。
「どんなでも嫌われない」と知っていれば、正直に打ち明ける頻度が高くなると思います。
「いつでも味方なんて、そんなの親なら当たり前、言わなくても分かるでしょ?」本当にそうでしょうか?海外の育児書、教育系Youtuberを見ていると、言葉にして伝えることを大事さを感じます。
思春期に差し掛かると難しい声がけですが、小さなうちから刷り込んでおきたいですね。
・おまけ:「おおかみ少年の話」を見せる
ストーリーで伝えるのも、分かりやすくておすすめです。
3歳と5歳の息子には、「オオカミ少年」のBabybusのパロディをYoutubeで見せています。(オオカミがお腹が痛い〜って何度も嘘をついて、最後本当にお腹が痛くなって苦しいのに信じてもらえない)
何度も何度も見ているので、もう記憶しているほど。「嘘をつくと信じてもらえなくなるね」「誰も助けてくれないね」と理解しているようです。
自分の気持ちにも嘘をつかないでね
サティアのもうひとつの教えは「自分の気持ちにも正直に」です。これは、現代を生きる子どもたちに積極的に教えていきたいことですね。
例えば
・本当は嫌なのに我慢してやること
・人の意見で決めること
・周りに合わせて決めること
・疲れているけど「まだ大丈夫!」と言い聞かせて頑張ること
などです。
多くの現代人が自分の欲望を押し殺して生きていると思うので、これってなかなか難しいですよね。
でも、「自分の気持ちに正直に生きよう」「その方が良いよ!」という価値観を持っているだけで、選択が変わってくると思います。
人を守るための嘘は良い?
嘘はいけないものと教えていきたいですが、人を守るための「嘘」はどうでしょう?
ヨガ哲学には「アヒムサ(非暴力)」という教えもあります。他人や自分を傷つけないこと。直接的に相手を傷つけることだけでなく、言葉の暴力も含まれます。
なので、嘘をつかないと相手を傷つけてしまうような場面であれば、嘘をつくのはありかなと私は思います。
ただ、積極的に嘘をつく必要なありません。嘘をつかないために「何も言わない」を選択することもできます。この塩梅は、生きていく過程で子どもたちにも分かってもらえたらなぁと思います。
おわりに
子どもに伝えたいヨガ哲学として、サティア(正直)をご紹介しました。
子どもは嘘をつくこともあるから、鈍感に受け止めていきたいけれど、オトナになっても嘘を連発するようになって欲しくない!というのが私の想いです。そのために、心掛けたい対応はたくさんあります。
親も、常に正直でいることが大事だと思います。「ママは25歳よ」という小さな嘘も、結局は嘘なのであまりおすすめしません(笑)サティアは、自分の気持ちにも正直でいなさいという教えです。無理しすぎ、頑張りすぎは禁物です。